QPU 命令その 1
組合わせゲート
ゲートを組合わせて別のゲートを作る
ボブには生まれつきのハッカー気質があります。 同じ小学校に通うイブは、謎のルートで手に入れた最新の量子コンピュータ QStation 7 をいつもボブに自慢してきます。 ボブには型落ちの QStation 5 mini しかありません。 でも、ボブはたったそれだけの機材でイブに負けない量子回路をいつも作り上げてしまいます。
たとえば、ボブの QStation 5 mini には PHASE(π) ゲートがありません。 しかし、次のように H ゲートと NOT ゲートを組合わせれば PHASE(π) を作れることをボブは発見しました。
こんな調子で、ボブは必要なゲートはいつも自分で作ってしまいます。 いつの間にか自然と身に付いた能力ですが、手元にあるものだけで何とかしようとするボブの姿勢は、ハッカーの独創性の源と言えます。
ボブのテクニックを再現してみましょう。 HXH の組合わせで PHASE(π) と同じ効果 (\(|1\rangle\) の位相が π 回転) ができれば成功です。
ボブは秘密のテクニックを使って、まったく新しいゲートを作り出すこともできます。 たとえば H ゲートと PHASE(π/2) ゲートを組合わせると、次の不思議な平方根 X ゲートが誕生します。
平方根 X ゲートはその名の通り、2 回掛けると X ゲートになるゲートです。
平方根 X ゲートを 2 回適用し、X ゲートと同じ効果 (ビットの反転) が起こることを確かめましょう。 ここでは \(|0\rangle\) が \(|1\rangle\) になれば成功です。
なぜ、平方根 X ゲートを 2 回適用すると X ゲートになるのでしょうか? ボブの最初のテクニック、PHASE(π) ゲートを作る方法を思い出してください。
左右はまったく同じ効果を持つので、両者を H ゲートで挟んだもの同士もやはりまったく同じ効果を持つはずです。
H ゲートはそれ自体が H ゲートの逆演算だったので、HH のように連続して掛けると「何もしない」と同じことになります。
これを使うと 2 つ上の図は次のように書き換えられます。
つまり、X ゲートを H と PHASE(π) ゲートで表現できることが分かりました。 ここでボブの 2 つめのテクニック、平方根 X ゲートの作りかたを見てみましょう。
左右をそれぞれ 2 回繰り返してみます。
連続する 2 個の H は何もしないので消すと、
連続する 2 つの PHASE(π/2) は PHASE(π) と同じなので、置き換えると、
この左側は、最初に示したように X ゲートと同等です。そこで次のように書き換えることができ、結局 2 個の平方根 X ゲートは X ゲートと等しいことが示せました。