QPU 命令その 1

CLONE 命令!?

禁じられた QPU 命令

現在のプログラミング言語では、変数 a の値を別の変数 b に簡単にコピーできます。 ところが QPU の世界では、ある量子ビットの情報 (振幅の大きさ、位相) を他の量子ビットにコピーできません。 つまり、QPU には CLONE 命令はありません。 これは量子ビットを支配する量子力学のルールによるもので、「クローン禁止定理 (no-cloning theorem)」として知られています。

数式を使ったクローン禁止定理の証明はとても簡単で、量子ビットのコピーが作れるとなると明らかな矛盾が生じることを使います参考として、ふろく: クローン禁止定理の証明に数式による証明があります。。 以下では、量子ビットのコピーが不可能であることを、数式を使わず直感的に説明します。

もし量子ビットの複製が可能であれば、未知の状態にある量子ビットが与えられたとき、同じ状態を持つ量子ビットを好きなだけ作ることができます。 何百万個〜と超大量にクローンを作っておけば、それらをすべて測定することによって、元の量子ビットの状態を推定できます。 これは 1 つの量子ビットから無限に情報を得られることを意味し、明らかに不可能です。

たとえば確率的ビットの説明で出てきたような、確率 (振幅の大きさの 2 乗) にすべての Wikipedia の記事、すべての YouTube 動画、インターネットでみつかる猫画像データを詰め込んだ量子ビットを持っていたとします。 もし量子ビットを他のビットにコピーできる能力があるなら、好きなだけコピーを作ってすべて測定することで、0 が出た回数から元データを取り出すことができます。 十分な数のクローン量子ビットを作ってそれぞれ測定すれば、任意精度での確率が統計的に求まるたとえば未知の量子ビットを複製し測定するプロセスを 100 万回繰り返し、0 が出た回数が 1,000 回だったとします。すると元の量子ビットを測定して 0 が出る確率はおよそ 0.1% だと推定できます。同じプロセスを 100 億回、1 兆回、と繰り返せば、推定できる確率の精度 (少数点以下の桁数) を 0.1101…% のように増やしていくことができます。ので、あらゆる猫画像がたった 1 量子ビットから取り出せるのです。

これは明らかに、我々の住んでいる現実世界ではありえません。 量子コンピュータを持っている会社なら、量子ビットたった 1 つでデータセンター以上のストレージを手に入れたことになるからです。 しかも、データを詰め込んだ量子ビットをたった 1 個送るだけで、超広帯域なデータ転送まで実現できてしまいます。 そんな夢のようなニュース、聞いたことありませんよね?