X ゲート は従来の NOT 演算に似た働きをします。 NOT 演算は、0
に適用するとビットが反転して 1 になり、逆に 1 に適用すると 0 になるのでした。つまり、NOT 演算は
"0 と 1 を入れ替える" という働きをします。
は NOT 演算の量子版で、量子ビットの \(|0\rangle\) と \(|1\rangle\)
を入れ替えます。 図で表すと、次のような "円の入れ替え" の働きをします。
X ゲートを回路に置いて、\(|0\rangle\) と \(|1\rangle\) が入れ替わることを確認しましょう。
が従来の NOT
演算と異なるのは、重ね合わせ状態にある量子ビットに作用できる点です。 たとえば、次の \(|0\rangle\) と
\(|1\rangle\) の重ね合わせ状態にある量子ビットを考えましょう。
これに を適用すると、\(|0\rangle\) と \(|1\rangle\) の内容を交換します。
これはまさに、先ほど見た "\(|0\rangle\) と \(|1\rangle\) の入れ換え" という効果です。
を続けて 2 回適用するとどうなるでしょうか? 図から分かるように、 \(|0\rangle\)
と \(|1\rangle\) が 2 度入れ替わることで元の状態に戻ります。 つまり、量子 NOT
ゲートはそれ自身を打ち消す効果を持っています。数学ではこれを、「量子 NOT
ゲートはそれ自身の逆演算である」と言います。
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重ね合わせ状態の量子ビットに を適用し、\(|0\rangle\) と \(|1\rangle\)
が入れ替わることを確認しましょう。
- を 2 回適用すると元に戻ることを確認しましょう
「X ゲート」の名前の由来は、量子ビット状態をブロッホ球で表すと量子 NOT ゲートは X
軸を中心とした回転操作の一種だからです。
同様に、Y 軸で回転する Y ゲート 、Z 軸で回転する Z ゲート も存在します。さまざまなゲートの回転については、他のゲートを学んだ後で詳しく説明します。